診療拒否している動物病院ってある？フラワー動物病院の見解
「まだ先生のレベルじゃ診ちゃダメだよ！」
と私が獣医師1年目のときに先輩獣医師から言われた一言です。
診察室に突然先輩獣医師が入ってきて腕組みしながら
飼い主さんにもわかるくらいの大声で言われました。
当時の私は深くプライドが傷つきました。
私が昔勤務していた動物病院では獣医師が常に4人以上診察にあたっていました。
椎間板ヘルニアのワンちゃんを偶然診察しようとしたときのことです。
「急に犬の後ろ足が立たなくなった・・・」
そんな症状で最悪なのが椎間板ヘルニアです。
椎間板ヘルニアは症状が出始めてから約48時間以内に適切な処置をしないと
二度と元に戻らないことがあります。
診断も難しく、現在ではCTやMRIといった購入するだけでも
数千万円程度の費用がかかる高度な検査機器が必要です。
単純なレントゲンでは椎間板ヘルニアの診断はできません。
こちらの画像のようなMRIやCTといった機器が椎間板ヘルニアの診断には必要です。
当時の私にはCTを読影し診断する能力もありませんでしたし手術もできません。
だから先輩獣医師から「お前はまだ診ちゃいけない」といわれていたわけです。
「もし私が中途半端に診察し、椎間板ヘルニアだと気づかずに
不適切な治療をしてしまったら」と思うと獣医師1年目でもプライドが傷ついていましたが、
今では先輩獣医師に大変感謝しています。
椎間板ヘルニアの手術ができる動物病院はおそらく兵庫県では10か所もないでしょう。
それくらい難しい病気なのです。
フラワー動物病院も規模が小さい動物病院なので
椎間板ヘルニアの診断や手術ができません。
だから後ろ足が急に立たなくなったワンちゃんが来院したら
すぐに椎間板ヘルニアの診断や治療のできる動物病院を紹介しています。
そして手術が終わった後のリハビリとしてフラワー動物病院では鍼治療を行っています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ただ、椎間板ヘルニアの診断や手術のできる動物病院を紹介しようとしたら
私に指をさしながら「診療拒否か！」と夜叉のようにキレる飼い主さんがいます。
たとえば、当院とは関係のない飼い主さんですが
こんな感じでネットで無料で弁護士さんに相談する方もいるようです。
上記のリンク先の相談でも相談者さんは長文ですが
弁護士さんはほぼ1行で返していますね。
「専門外の場合、適切な動物病院を紹介するのは診療拒否ではない」と。
そこで、この記事では診療拒否に対する考え方をご紹介します。
診療拒否の考え方｜フラワー動物病院の考え方
まずは診療拒否の定義から
診療拒否とはその動物病院で診療できるのに、わざと診療をしないことです。
まずフラワー動物病院だけでなくどこの動物病院も絶対に診療拒否はしません。
理由は２つあります。
この理由がもっとも飼い主さんにも理解しやすいでしょう。
動物病院は営利団体です。公務員ではありません。
家に帰ったら奥さんや旦那さん、子供、ペットがいます。
お金を稼がないと家族が路頭に迷います。
一家離散になり、家族がバラバラになります。
どこの動物病院でもそうだと思いますが
一人でも一匹でも多くの飼い主さんやペットに来院してほしいです。
はっきりいって動物病院だって来院件数が減って潰れる時代です。
兵庫県でも私が開業した2010年2月から数件潰れています。
自分の動物病院に来院してくれる飼い主さんは神様のような存在です。
「私の動物病院はあなたのおかげで経営できています」それくらいの気持ちです。
診療拒否したら治療費が1円も動物病院に入りません。
そんなことしたら潰れます。
たとえば、八百屋さんが「このリンゴください」とお客さんに言われたとして、
「いやこのリンゴは売らない！」というでしょうか？
言わないですよね。
なぜ「売らない」と拒否しないのでしょう。
それは儲からないからです。
あるいは車のディーラーさんで
「この車ほしいんですけど」とお客さんに言われて
「いや、車は売りません」っていうでしょうか。
もちろん、破産しているなどしてローンが組めないから売らないというケースはあるでしょう。
ただ、ローンが組めない場合は売らないのではなくて
「売りたくても売れない」だけです。
車屋さんが車がほしいお客さんを拒否しない理由は
車を売らないと儲からないからです。
そう考えると、どうして診療拒否をするでしょう？ということです。
2つ目の理由ですが、こちらの裁判例をご覧ください。
5～6ページ目です。
⇒裁判例の詳細はコチラ
上記の裁判例を引用させていただきますね。
この事例は動物病院で行った手術に関する裁判です。
（引用元http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06406/a4.pdf）
（4 ） 獣医療における転医（転送）義務について
本件においては獣医師の転医義務も争点となった。
獣医師側は，「 転院させる法的義務はない」と主張したが，
飼い主側が主張するとおり「人の医療の場合，
転院義務は診療契約に内在する義務」として認められている。
人の医療契約は，当該医療機関の特性に従って医療水準
（平成7 年6 月9 日最高裁判決．未熟児網膜症姫路日赤事 件［ 16］ ）
が要求されており，患者の疾患が，当該医療 機関の技量・設備では適切に対応 できない場合には，そこでなしうることを見極め，より規模の大きい，設備の 整った医療機関に早めに 転送することが，医師の義務とされている
（ 平成9年2月25日最高裁判決．薬剤による417 顆粒球減少症の副作用［17］ ） 。
そして，①医師の 臨床経験や医療設備では治療が困難であること，
②適切な医療 機関が搬送できる範囲内に存在し，受け入れを認めていること，
③患者の状態が搬送に耐えうる状態にあること，
④転医により危険回避や疾病改善の見込みがあることなどの可能性がある場合に ，
転送義務が発生するとさ れている。
また転送義務の内容としては，
患者への転医勧告，転送先への情報提供，患者の安全を確保しながらの転送とされている［18］。
もっとも、人の医療の場合，国が平成4年以来，医療法の改正を重ね，
医療機関を機能別に体系化することに取り組んできた。
診療所，一般病院，地域医療支援病院，特定機能病院などに大別され，
一次医療（外来・初期診療） ，二次医療 （ 入院・検査・手術） ， 三次医療（高度先進医療）といっ た役割分担が推進されている。
そして，地域に根ざす開業医は，基本的な診断・治療を幅広く行い，
必要に応じて患者を病院へ紹介することが求められている［19］。
獣医師の場合も，準委任契約である診療契約に基づき，
善良なる管理者としての注意義務（民法644条）を尽くして
動物の診療に当たる義務を負うとされている［3］。
そして、この注意義務の基準は，人の医療と同様 に，
診療当時のいわゆる臨床獣医学の実践における獣医療水準である［3］。
この獣医療水準は，診療に当たった獣医師が診療当時有すべき獣医療上の知見であり，
当該獣医師の専門分野，所属する医療機関の性格等の諸事情を考慮して判断されるべきものである。
そして，獣医師が自ら獣医療水準に応じた診療をすることができないときは，獣医療水準に応 じた診療をすることができる医療機関に転医することについて説明すべき義務を負い，
それが 診療契約に基づく獣医師の債務の内容 となると判示 されている［3］。
わかりましたか？
要するに、自分の技量を越えていると獣医師が判断した場合には
診断や治療ができる動物病院を紹介するのが義務だと裁判官が言っているわけです。
獣医師としてのプライドを捨て、「できないことはできない」と
飼い主さんに告げることはペットの命のために当然のことだと思っています。
そしてペットや飼い主さんに元気に帰ってきてもらいたいと考えるのが
獣医師だと思っています。
こんな感じでプライドを捨てられないのが「ヤブ獣医師、ヤブ病院」だと思います。
ヤブな動物病院の定義についてはこちらの記事で詳しく解説しました。
⇒ヤブな動物病院とは？フラワー動物病院なりの見解はコチラ
最後にまとめますと、動物病院では診療拒否をするところはありません。
- 診療拒否をしたら動物病院が儲からない
- 裁判例として自分で診れない場合は紹介するよう言っている
この2点からです。
さらに加えたら、ペットの病気を治すには
自分の動物病院ではなくて他の動物病院の方が適切だと苦渋の判断をしているだけです。
その真意が伝わらない場合に飼い主さんに
「診療拒否だ！」と言われてしまうのでしょう。
とにかくフラワー動物病院では診療拒否はしていませんし
他の動物病院も診療拒否はしません。
関連ページ
- 大久保ICからフラワー動物病院への道順解説動画
- 大久保ICからフラワー動物病院への道順解説動画です。
- 猫ウイルス性鼻気管炎の原因は？
- 猫ウイルス性鼻気管炎の原因についてわかりやすく解説しました。
- 動物病院の転院にまつわる知られざる真実とは？
- 動物病院の転院にまつわる知られざる真実についてわかりやすく解説しました。
- フラワー動物病院のワクチンの料金が安い理由とは？
- フラワー動物病院のワクチンの料金が安い理由についてわかりやすく解説しました。
- 犬が朝、黄色い胃液を吐く原因と対処法を動画で解説
- 犬が朝、黄色い胃液を吐く原因と対処法を動画で解説します。
- 猫の甲状腺機能亢進症の治療法
- 猫の甲状腺機能亢進症の治療法についてわかりやすく解説しました。
- 犬の椎間板ヘルニアの鍼治療実績（動画解説）
- 犬の椎間板ヘルニアの鍼治療実績を動画を用いて解説しました。
- 犬の椎間板ヘルニアにステロイドを使うと貧血になりますか？
- 犬の椎間板ヘルニアにステロイドを使うと貧血になるのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 愛犬の皮膚が臭い原因は？
- 愛犬の皮膚が臭い原因についてわかりやすく解説しました。
- 犬も精神病になりますか？犬の皮膚病が改善されない場合に考えること
- 犬も精神病になるのでしょうか？犬の皮膚病が改善されない場合に考えることについてわかりやすく解説しました。
- 前肢が器用な犬は存在するのか？
- 前肢が器用な犬は存在するのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 狂犬病は集合注射か動物病院のどちらで受けた方がいい？
- 狂犬病は集合注射か動物病院のどちらで受けた方がよいのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 赤いブツブツが猫のアゴに！赤いブツブツの正体とは？
- 赤いブツブツが猫のアゴにある。その赤いブツブツの正体についてわかりやすく解説しました。
- 犬にもニキビってできるの？治療は？
- 犬にもニキビってできるのでしょうか？もしできるとしたら治療法についても解説したいと思います。
- 犬猫にドライフードと缶詰ならどちらを与えたらよいの？
- 犬猫にドライフードと缶詰ならどちらを与えたらよいのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 子猫にシャンプーをするときの注意点
- 子猫にシャンプーをするときの注意点についてわかりやすく解説しました。
- 犬に生野菜を与える目的とは？
- 犬に生野菜を与える目的についてわかりやすく解説しました。
- 【動画解説】フラワー動物病院に通院するメリットと特徴について
- フラワー動物病院に通院するメリットと特徴について動画で解説しました。
- 【閲覧注意】犬についていたマダニの動画
- 犬についていたマダニの動画をご覧ください。
- 犬の皮膚が臭くなる原因とは？
- 犬の皮膚が臭くなる原因についてわかりやすく解説しました。
- 生まれたばかりの子猫を飼う注意点とは？
- 生まれたばかりの子猫を飼う注意点についてわかりやすく解説しました。
- 子犬を飼ってから死ぬまでに病院代はいくらかかりますか？
- 子犬を飼ってから死ぬまでに病院代はいくらかかるものなのか、わかりやすく解説しました。
- 犬が飼い主の帰宅を感知できる７つの理由
- 犬はどうやって飼い主の帰宅を感知しているのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 犬や猫の目がショボショボしている原因は？
- 犬や猫の目がショボショボしている原因についてわかりやすく解説しました。
- 犬も花粉症になりますか？意外な原因で花粉症が起こる
- 犬も花粉症になるのでしょうか？意外な原因で花粉症が起こることがあります。
- ワクチンが3回終了しないと子犬は散歩してはいけないの？
- ワクチンが3回終了しないと子犬は散歩してはいけないのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 犬がガリガリに痩せるある原因とは？
- 犬がガリガリに痩せるある原因についてわかりやすく解説しました。
- 犬の肥満防止に食事のルールを決めましょう！
- 犬の肥満防止に食事のルールを決めましょう。食事のルールについて詳しく解説します。
- 犬の耳毛は抜くべきか？
- 犬の耳毛は抜くべきでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 人間の想像妊娠は犬にも起こりますか？
- 人間の想像妊娠は犬にも起こるのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 犬の偽妊娠の症状・対処・治療はどうする？期間はどれくらい続くの？
- 犬の偽妊娠の症状・対処・治療はどうする？期間はどれくらい続くのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 娘の乗馬体験｜たった300円で大満足の動画公開
- 娘の乗馬体験、たった300円で大満足の動画を公開します。
- 猫のゴロゴロ音の秘密について
- 猫のゴロゴロ音の秘密についてわかりやすく解説しました。
- 愛犬が家具をかじる癖を治す方法
- 愛犬が家具をかじる癖を治す方法についてわかりやすく解説しました。
- 猫の顔が腫れる原因とは？
- 猫の顔が腫れる原因についてわかりやすく解説しました。
- フィラリアの飲み薬を吐くなら別の予防法があります！
- フィラリアの飲み薬を吐くなら別の予防法があるので、ぜひこの記事をご覧ください。
- 犬や猫の外耳炎の原因は？
- 犬や猫の外耳炎の原因についてわかりやすく解説しました。
- 犬にフィラリア予防をする意味は？
- 犬にフィラリア予防をする意味についてわかりやすく解説しました。
- フェレットのフードってどうすればいいですか？
- フェレットのフードってどうすればよいのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 犬の目が白い！でも白内障とは限りません・・・
- 犬の目が白くなってきても白内障とは限りません。わかりやすく解説します。
- 明るい場所なのに犬の瞳孔が大きい時に考えられることとは？
- 明るい場所なのに犬の瞳孔が大きい時に考えられることについてわかりやすく解説しました。
- 犬に牛乳を与えると高確率で下痢をする理由とは？
- 犬に牛乳を与えると高確率で下痢をする理由についてわかりやすく解説しました。
- フィラリアのように犬にデング熱はうつりますか？
- フィラリアのように犬にデング熱はうつるのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 犬が摂取すると危険な食べ物とは？
- 犬が摂取すると危険な食べ物についてわかりやすく解説しました。
- 猫アレルギーを改善する方法
- 猫アレルギーを改善する方法についてわかりやすく解説しました。
- ブリーダーさんが心を込めて育てたチンチラシルバーの猫ちゃん
- ブリーダーさんが心を込めて育てたチンチラシルバーの猫ちゃんの解説です。
- なぜ犬や猫に使用する抗がん剤は体重でなく体表面積で計算するの？
- なぜ犬や猫に使用する抗がん剤は体重でなく体表面積で計算するのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 犬も食物アレルギーになるか？原因とその対策について
- 犬も食物アレルギーになるか？原因とその対策についてわかりやすく解説しました。
- 犬の要求吠えをやめさせる方法
- 犬の要求吠えをやめさせる方法についてわかりやすく解説しました。
- ヤブな動物病院とは？フラワー動物病院なりの見解はコチラ
- ヤブな動物病院とは？フラワー動物病院なりの見解はコチラをご覧ください。
- なぜこの猫は片目を失ってしまったの？
- なぜこの猫は片目を失ってしまったのでしょうか？動画を用いて解説しています。
- なぜこのブルドックには下半身が不自由なの？
- なぜこのブルドックには下半身が不自由なのでしょうか？動画を用いて解説しました。
- なぜスーツケースに犬が入っていたの？
- なぜスーツケースに犬が入っていたのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 悪徳ブリーダーの犠牲になった犬の末路・・・
- 悪徳ブリーダーの犠牲になった犬の末路についてわかりやすく解説しました。
- 全身ノリで固められた犬がかわいそうな件
- 全身ノリで固められた犬がかわいそうな件についてわかりやすく解説しました。
- ゴミ袋に蛆虫にたかられている犬の結末は？
- ゴミ袋に蛆虫にたかられている犬がいました。詳細については記事をご覧ください。
- 飼い主に捨てられたのにひたすら待ち続ける犬に感動
- 飼い主に捨てられたのにひたすら待ち続ける犬に感動せずにはいられません。
- トレーラーにつながれていた足がボキボキに折れている犬の運命は？
- トレーラーにつながれていた足がボキボキに折れている犬の運命はどうなるのでしょうか？動画で解説します。
- ゴミ捨て場にボロボロの犬を発見！治療したところ・・・
- ゴミ捨て場にボロボロの犬を発見！治療した結果どうなったのでしょうか？動画で解説します。
- 猫がよくやる行動にどんな意味があるの？
- 猫がよくやる行動にどんな意味があるのでしょうか？わかりやすく解説しました。
- 失明しているピットブルが捨てられていました・・・
- 失明しているピットブルが捨てられていました残念な話を動画で解説しています。
- 虐待されている子供を守り続ける犬に感動
- 虐待されている子供を守り続ける犬に感動です。
- 捨て犬が飼い主を1年間待ち続けた結果どうなった？
- 捨て犬が飼い主を1年間待ち続けた結果どうなったのでしょうか？動画で解説しました。
- 虐待で下半身不随になった犬の運命は？
- 虐待で下半身不随になった犬の運命はどうなるのでしょうか？動画で解説しました。
- 巨大な目をしている猫の正体とは？
- 巨大な目をしている猫の正体について動画で解説しました。
- 子供が犬にもたれかかって遊んでいるのは虐待？
- 子供が犬にもたれかかって遊んでいるのは虐待なのでしょうか？動画で解説します。
- 紫色に染まった捨て猫を発見！虐待か？
- 紫色に染まった捨て猫が見つかりました。虐待なのでしょうか？解説します。
